「手前味噌」という言葉があります。自分の家で作った味噌の味を自慢することから転じて、自分のことを褒めることを指すわけです‥。それくらい、味噌というものは家庭で作ることが一般的だったこと、家庭ごとに味のバラエティーが豊富だったこと、そういうことを示している言葉なのだと思います。時は変わって現代‥一体、どれくらいの家庭が自分の家の味噌というものを持っているのでしょうか。あらためて調査などするまでもなく、自宅で味噌を作っている家というのは少数派でしょう‥いやいや、絶滅危惧種くらい少ないのではないでしょうか。
わが家ももちろん自家製の味噌などというものはありません。昔は作っていたのに‥などということもありません。ですが、まるで自分の家で作っているかのように、わが家の味になっている味噌はあります。それが写真の穀平みそです。パックに「信州小布施」とあるように、栗で有名な長野県北部の小布施町にある味噌醸造場なのです。穀平みそとのお付き合いは、私がカミさんと結婚した頃からのことになりますから、もうだいぶ長い付き合いになるわけです。自分で所帯を持つようになってから、ずっとこの味噌を食べているので、まるで自分の家の味のようになっているわけです‥。
昔は実際に小布施まで出向いて買っていたものですが、今ではネットで買えるので本当に便利になりました。わざわざ買いに行くのも、それはそれで楽しかったのですけどね‥。そこまでしての味なのか‥と問われると、こればっかりは手前味噌ですから、万人にウケる味なのかどうかは分りません。とりあえず、私とカミさんの評価としては「長野っぽい味がする」というところです。言葉にし辛いのだけど、ひと言でいうなら「素朴」という言葉が一番あっているでしょうか。要は飾らない味なのですよね。暑い夏には、胡瓜にこの味噌を付けてほおばると、何とも言えない北信の味がするのです‥。